第128話 AI、SNS時代の「丙午」とは?
2026(令和8)年は干支(えと)では「丙午(ひのえうま)」にあたる。「えと」といってもZ世代には「?」かもしれない。昭和、平成生まれにとっても、メディアや年賀状(随分、この風習もすたれたが)で、今年が「ウマ年」であることは知っていても、「ウマ」が「馬」ではなく、「午」となると少しおぼつかない。
Z世代とは? それは1997年~2012年生まれの若者。そのはしりは今年29歳、そろそろ“適齢期”(こんな言葉ももはや死語だろうが)を迎えようとしてい。子どもの頃からスマートフォン、SNSが身近に存在する、いわゆるデジタル・ネイティブといわれる若者たちだ。
干支とは何ぞや? それは「十干十二支(じっかんじゅうにし)」からきている。「十干」とは甲、乙、丙、丁……と10種類ある。戦前の学校の通知表が甲、乙、丙の表記だったと知ればZ世代は仰天するだろう。ただ、いまでも「甲乙つけがたい」等、日常語として使われていることは、昭和世代には喜ばしい。「十二支」は子(ね)、丑(うし)、寅(とら)と続く12種類。「今年はウマ年」とか「自分はイヌ年」等、中高年者の会話に登場するが、こちらもZ世代には馴染みが薄い。この「干」と「支」の組み合わせは10と12の最小公倍数の60通りある。60年周期で回り、今年がその一つの「丙午」なのだ。
その丙午生まれの女性には迷信が付いて回る。『ひのえうま』によると「江戸時代に生まれた迷信」。何でも「恋人に会いたい一心で放火事件を起こした八百屋の娘お七が丙午生まれだった」のがコトの発端とか。これが歌舞伎等の題材とされ、「丙午の女は気性が激しく、夫を食い殺す」「嫁ぎ先に不幸をもたらす」等と世間に広まっていったようだ。この迷信はエスカレートし、丙午生まれの女性との結婚を避けるようになり、それが「結婚に苦労する」→「将来不幸になる子を産むべきでない」となり、丙午に女児をもうけることを避けるようになっていった。当時は「生まれてみないと男女がわからない」時代なので、その年に子どもを産むこと自体を避けるようになったという。
120年前の1906年はすでに明治の世に入り39年、「文明開化」の時代を迎えていたが、迷信は残り、新聞には「縁談がまとまらず、絶望した丙午生まれの女性が自殺」という報道があったほど。
その後、干支(えと)が一回りした1966(昭和41)年でも迷信は信じられ続けた。終戦からすでに20年以上経過、東京オリンピックが開催(1回目)されて2年後で、日本は高度成長の真っ只中。しかし、この年に生まれた子どもはわずか136万人で、前年より約55万人(25%)も激減するという異常な社会現象が見られた。暦年の出生数のグラフを見ると、この年だけがガクンと谷底に急落しているようにみえる。
しかし、60年前に生まれた女性を探すとキラ星のように輝いている。アトランタオリンピックのマラソン銀メダリストの有森裕子さん(現在・日本陸上競技連盟会長)やソウルオリンピック・アーティスティックスイミング銅メダリストの小谷実可子さん、女優の小泉今日子さん、鈴木保奈美さん、斉藤由貴さん、シンガーソングライターの渡辺美里さん、広瀬香美さん、エッセイイストの酒井順子さん、漫画家・ひうらさとるさん等、挙げればキリがない。酒井さんは「丙午生まれでも生きていけるという壮大な実証実験をしたようだ」と記している。
一方、2024年に国内で生まれた赤ん坊はわずか68万人に留まる。合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに産む子どもの数)は1.15で人口が維持できる2.1を大きく下回っている。60年前の丙午で激減した年の136万人のちょうど半分だ。いかに近年の日本の人口減少が激しいかがわかろうというものだ。
さて、2026年、令和の丙午はどうなるのか? まさかAI、SNSの時代に迷信をまともに信じる人はいまい。ただ、60年前に存在しなかったのがSNSだ。SNSではデマやフェイクが飛び交う。それを深く考えることなく、気軽に「いいね」を押したり、「同調圧力」という魔物に取りつかれることが全くないか懸念される。
「人間は考える葦(あし)」(パスカルの言葉)だったはず。AIやSNSがその「人間」を根本から変質させているとしたら恐ろしいことだ。「情報を読み解き」「考える」習性を持ち続けたいものだ。出産を考えるパパやママさん、こんな風に考えたらどうですか?「同年齢の人数が少なければ、子供さんは受験にも就職にも得ジャン」。モノは考えようですよ。余計なお世話でしたか・・・。
| コメント (0)