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2018年8月

2018年8月 6日 (月)

徒然エッセ 第16話 ミャンマーのスマホに見た「文明の進歩」

 前号では、カンボジアの紙幣に日の丸が描かれていることを紹介し、最新カンボジア事情をお伝えした。(ブログ「徒然エッセイ」第15話)今回はミャンマー(旧ビルマ)からレポートする。

<アジア最後のフロンティア>

 ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と言われる。「最も開発が遅れた国」ということは、裏返せば経済成長の潜在力を秘めている国となる。

 ミャンマーと言えばアウン・サン・スーチー氏を連想する人が多いだろう。長年、軍事政権に自宅軟禁されながらも人権問題・民主化運動のリーダーとしてノーベル平和賞に輝いた。二〇一五年の総選挙で圧勝し、国家リーダーに就いたが、政府、与党内に軍部を抱え、ロヒンギャ難民問題では「人権抑圧」だと国際的批判を浴びるなど、政権運営では難しいかじ取りを余儀なくされている。

<ASEAN最貧国>

 首都はヤンゴン(旧ラングーン)から、二〇〇六年にネーピードーに移転した。中国、インド、タイ、ラオス、バングラデッシュの五か国と国境を接する。人口の九割は仏教徒だが、百三十五の少数民族がいて、複雑な歴史をたどり、軍事政権に対する欧米の経済制裁によって、最も経済発展が遅れた。国民一人当たりのGDPは何とか千ドルを超えたレベルで、ASEANでは最貧国だ。

 

コメ、豆、ゴマなどが主要生産物の農業国だが、金、銀、銅などの資源やルビー、ヒスイなど宝石を産出、LNG(液化天然ガス)をタイ、中国に輸出。日本からは自動車、電化製品を輸入している。ヤンゴン(旧ラングーン)ではボディーにペンキで日本の会社名が書かれた中古車が多く見られた。「日本の中古車は人気が高い。買い替え時も高く売れるので敢えて車体に書かれた日本の会社名を消さないのだ」という。ただ、二〇一七年に政府が交通渋滞対策として、輸入は新車も中古車も左ハンドルだけに制限したため、右ハンドルの日本車は劣勢で、中国、韓国からの左ハンドル車が優勢だ。

<電気が通じていなくともスマホ>

 道路、橋、上下水道などインフラ整備が遅れており、特に電力は最大課題だ。世帯電化率は全国では三〇%台。地方では電気が通じていない所の方が多い。しかし、携帯電話の普及率は九〇%以上で通話もメールも「スマホの機能もほぼ日本と同じレベル」(現地ガイド)だという。

 「電気も通じていないのにどうして携帯やスマホに充電するのか」と聞いたら、「バイクや自家発電用のバッテリーで充電する」という。そういえば二人乗りのバイクの後部座席の若者が発電用のガソリンを入れたポリタンクを片手で持って走っていた。「危ない」と冷や冷やしたが、慣れた感じだったのに驚いた。

電話を例にとると、私たちが経験したのは固定式のダイヤルを回す電話→プッシュボタン式電話→ポケベル→ショルダー型携帯→ガラ携→スマホと、変化をたどってきたが、「文明の進歩」というのは、かつての経験と同じ順序ではなく、ジャンプしていることに気づかされた。

<ミャンマー開発の争奪戦>

 

ミャンマーは近年、外国からの投資をテコに経済成長が加速している。労働者の賃金は月平均十一万チャット(約一万円)で、ASEANでは労働コストが最も安いのが外国企業にとっては魅力だ。

さらに人口も五千万とカンボジアの三倍もいるので、外国企業にとってミャンマーは「現地生産→輸出」という単なる「生産工場」だけでなく、「消費市場」でもあるのだ。

 ミャンマーへの日本企業の進出も二〇一一年では約五十社だったが、今では四百社近くに増え、全日空が毎日、成田・ヤンゴン便を就航させるなど、ビジネスは急拡大している。

 ただ、日本が中心になって開発したティワラの経済特別区(SEZ)は日本が四九%,ミャンマー側が五一%の出資比率なのに対し、別の特区では中国の出資が七〇%で中国のしたたかさが見える。

「最後のフロンティア」は成長の潜在性、可能性を秘めていることは事実だが、中国、日本、タイ、ベトナムなどの「文明の関与の競争」に巻き込まれている一面もあり、資本、技術、人材の活用で無秩序な乱開発の荒野にならないか、少し気がかりだ。

                                (自由待夢)

                            イラスト・山下一徳                                                 リベラルタイム」2018年9月号より

                (http://pict-dd.cocolog-nifty.com/tsurezure/)

 

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