« 2020年2月 | トップページ | 2020年5月 »

2020年4月

2020年4月27日 (月)

徒然エッセイ第36話 人類の克服できない壁

 数カ月前、こんな世界を、こんな日常を一体、誰が予測できただろうか。年が明けたころ、多くの日本人は「いよいよオリンピック・イヤーだ。開幕まであと〇〇日」と、2020東京オリンピック・パラリンピックのカウントダウンに期待を膨らましていた。アメリカだけでなく、世界は「トランプと戦う民主党候補はバイデンか、サンダースか」と米大統領選の予想に忙しかった。しかし、新型コロナウイルスは世界を震撼させ、オリンピックを歴史上初めての「延期」に押しやり、「緊急事態宣言」で世界経済は凍りついている。世界人口の過半が強制力の有無はあるものの「外出自粛」を迫られている。今年、世界からスポーツが消え、日本中から「祭り」が消えてしまう。そんな中、「ステイ・ホーム」(おうちにいて)という小池百合子・東京都知事の呼びかけに従い、自宅で悶々としていた際、書棚の一冊に目がとまった。『十年後の衝撃│2001年・日本と世界に何が始まる』(舛添 要一 、プロジェクト3D共著、PHP刊)だ。一九九二年発行の本で、当時視界に入りつつあった二十一世紀を前に、日本と世界の課題に触れ、問題提起を試みた一冊だ。

<20世紀の大予言>

 「十年後の衝撃」の141ページによると、当時、一般紙だった「報知新聞」が二十世紀に突入した一九〇一年の一月二、三日付けの紙面で「二

十世紀の大予言」という特集を組んでいる。新世紀の百年について大胆予測を試みているのだ。

① 「無線電信は世界諸国に連絡し、東京に在る者がロンドン、ニューヨークの友人と自由に対話できる」

② 「数十年後、欧州の天に戦雲暗澹たることあらん時、東京の新聞記者は編集局にいながら、電気力で欧州の状況を早取写真となすこと得

 べく、写真は天然色を現象すべし」

③ 「十九世紀末で五十日を要した世界一周は二十世紀末には七日間を要すれば足りる」

④ 「新機器発明せされ、暑寒調和のために、適宜空気を送り出すことを得べし、暑寒知らず」

⑤ 「電気力で野菜を成長することを得べし」

⑥ 「伝声器の改良ありて、十里の遠きを隔てたる男女、互いに延々たる情話なすことを得べし」

⑦ 「電話口に対話者の肖像現出するの装置あるべし」

⑧ 「写真電話で遠距離の品物を鑑定し、売買契約を整え、品物は地中管装置にて瞬時に落手する」

⑨ 「医術の進歩は電気針にて苦痛なく局部に薬液を注射し、X線により応急治療自由なるべし。切開術は毫も苦痛を与ふることなし」

⑩ 「東京・神戸間は二時間半を要す。動力は石炭を使用せず、煤煙の汚れなく、給水の停車もない」

⑪ 「馬車存在せしとは老人の昔話。電気車も大改良され、街路上や地中、空中走る」

⑫「日本は琵琶湖の水、米国はナイアガラ瀑布により水力電気を起こして、それぞれ全国内に輸送する」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このように電気、通信、移動手段、エネルギーの分野では技術革新をほぼ正確に予測している。一方で、以下の設問は予測が外れている。

⑬ 「天災は一カ月以上前に予測でき、暴風起こらんとすれば大砲を空中に放ちて変じて雨となす。地震は免れざるも家屋、道路は害を免れる」

(台風や集中豪雨は抑止可能で、地震はあっても被害は抑えられるとの予測は、自然災害に対する過信といえないか)

⑭ 「アフリカの原野でも獅子、虎、鰐等の野獣を見ること能わず、彼らは大都会の博物館に余命を継ぐのみ」(野生動物を軽く見過ぎている)

⑮「衛生事情進歩する結果、蚊およびノミの類は滅亡すべし」(都市部ではノミはほとんどいなくなったが、蚊は滅亡とは言えず、野生動物等を

   感染源とするウイルス感染症の脅威が繰り返されている)

32 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<自然相手のテーマは予測外れが多い>

 この「大予言」を現時点で採点すると二十三問中、十五問が「的中」か「ほぼ的中」で、百年間の長期予測としてはかなり確度が高いといえる。ただ、「自然」を対象にした設問では「外れ」が多い。人類は自らの叡智により科学技術の分野で技術革新を進め、文明の発展という実績を積んできた。しかし、相手がコト「自然」や感染症等となると、今なお、制御できていないのは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を見ても明らかだ。

「スペイン風邪」(一九一八年)から百年、感染症と人類の戦いは繰り返されている。二十一世紀に入っても、SARS(重症急性呼吸器症候群、二〇〇三年)、MERS(中東呼吸器症候群、一二年)、そして野生のコウモリが感染源とされる今回の新型コロナウイルスの世界的大流行。加えて世界各地で頻発する自然災害を見ても、人類は繰り返し脅威に戦慄している。最近読まれているカミュの『ペスト』ではないが「人間は管理しえない不条理と同居している」のが冷厳な現実だ。人類には克服できていない分野があり、むしろ移動手段等の文明の発達によって、以前なら特定地域の限定脅威だったものがすぐさま全世界の脅威になることを知るべきだろう。

<人類共通の敵を前に「自国第一主義」か>

 環境問題、気候変動、保健衛生、経済危機だけでなく、今回のコロナでは脅威が全地球的であることを改めて思い知らされた。にもかかわらずコロナの発生源の押し付け合いで、米中両国が罵り合ったり、WHO(世界保健機関)が「中国より」かどうかで、資金拠出を凍結するなどはあまりにも滑稽である。巨大過ぎる脅威を前に、「自国第一主義」は情けなさ過ぎる。 

 

 

| コメント (0)

2020年4月 1日 (水)

徒然エッセイ第35話 誰でもできるSDGs 3015運動

 最近、大手企業の経営陣、管理職は、決まって背広の襟元に丸い円状のカラフルなバッジを付けています。SDGsバッジです。「ウチの会社はSDGsキャンペーンに参加しています」とさりげなくPRしているのです。「地球環境保全等に理解ある会社」をアピールすることで、企業のイメージアップに繋がることを狙っているのです。ただ、そんなに格好をつけてバッジをひけらかさなくても、私達誰でもが今日からでも取り組めるSDGs運動があります。

<SDGsとは>

 イメージだけが先行しているSDGsとはそもそも何なのか。わかっているようでわかっていないので、おさらいしましょう。 SDGsはSustainable Development Goalsの頭文字で、日本語では「持続可能な開発目標」です。二〇一五年の国際連合サミットで採択されたもので、加盟国百九十三カ国が三〇年までの十五年間に貧困や環境、教育等の国際社会の課題を解決しようという取り組みです。十七の分野があり、その中に百六十九の個別行動目標が定められ、目標が複数あるのでSDGsと複数を示す小文字のsが付いているのです。

 国だけでなく、各国の企業、団体等にも参加を求めています。バッジが十七色で彩られ、カラフルなのは十七の分野からきているのです。スタートから五年が経過しましたが、最近、気候変動問題に国際的関心が高まり、昨年秋の国連のSDGsサミットで「あるべき姿からはまだ遠い」と危機感が表明されたため、改めて関心が集まり、バッジのラッシュになっているのです。

<3015運動>

 ここまで説明してもまだ、何か難しく、堅苦しく感じますが、そんなことはありません。誰でもがすぐにでも取り組める例があります。その一つが目標十二の「つくる責任、つかう責任」の中の「一人当たりの食料廃棄を半減する」という個別目標です。

具体例を紹介しましょう。三〇一五(さんまるいちご)運動です。富山県で行われている運動で、県の最高峰・立山の標高三〇一五mにちなんでいます。「食べきり三〇一五」と「使いきり三〇一五」の二つのパターンがあります。「食べきり」は「宴会では最初の三十分は席を立たずに料理を味わい、終了前の十五分で食べきろう」という呼びかけです。これは、地方では着席の宴会でも、乾杯が終わるとすぐに自分の席を離れてお酒のつぎ合いとなるために、料理が残され廃棄されることが多いので、最初と最後ぐらいは料理を楽しみ、食品ロスを削減しようというのです。

「使いきり三〇一五」は毎月三十日と十五日には自宅の冷蔵庫の中をチェックし、期限切れが近い食材を使い切ろうという呼びかけです。冷蔵庫をチェックする日を決めておき、うっかりによる期限切れでの食品ロスをなくそうというのです。 また、徳島県上板町では、小学校と地元のJA(農業協同組合)が協力、形が悪かったり、小さくて流通に適さないニンジンやブロッコリーを子ども達が収穫し、工場で加工してもらっています。それが町内の幼稚園や小中学校の給食に利用されるという、地産地消の食材教育運動になっているのです。

31

<食品ロスの45%は家庭から>

 日本では年間六〇〇万t以上が食品ロスとして廃棄されており、毎日一人ひとりが茶碗一杯分の食べ物を捨てていることになるのです。四五%が家庭から廃棄されています。食品ロスはコメの消費量の約八〇〇万tに近く、世界が途上国に食料援助している量の二倍近くに達します。

 近年、コンビニエンスストアでは、クリスマスケーキや恵方巻を予約制にして売れ残りを少なくしたり、消費期限が近い弁当やおにぎりを値引き販売する取り組みも始まっています。 そもそも賞味期限と消費期限に関する意識改革や、冷蔵庫の中もチェックせず「安いから買った」という衝動買い、子どもに対する「食べ残しの教育」等、家庭でできるSDGsは数多くあるはずです。

 

。

| コメント (0)

« 2020年2月 | トップページ | 2020年5月 »