徒然エッセイ第37話 「カタカナ」溢れるコロナ報道
「しゅうそく」といっても「収束」(落ち着くこと)は「終息」(終わること)とは違う。緊急事態宣言が解除されたと言っても、新型コロナウイルスとは「長期戦」だ。「第二波、三波」だの「秋冬の再流行」まで公然と語られると暗澹たる思いになる。この闘い、いつまで、どこまで続くのか。マラソンなら折り返し点を過ぎれば、残りの距離が見えてくる。見えない敵である新型コロナとの闘いは、最終ゴールも見えていない。陰鬱で息苦しい日常はなお、続く。そこで気分を変えて、連日の新型コロナ報道から「カタカナ」を切り口に軽いタッチのコラムにまとめた。
<「コロナ」って何? ウイルスって何?>
こうも長く洪水のようなコロナ報道が続くとストレスがたまり、そのはけ口として注文も付けたくなる。そもそも「コロナ」とは何? 太陽の外側の超高温のガス層のことで「王冠」を意味するラテン語、英語のCROWNの語源らしい。毎日のニュースで目にする、あの憎たらしい電子顕微鏡の写真は確かに形がコロナに似ている。さて「ウイルス」とは何? 微生物と思い込んでいたが、細菌とは違い自己増殖ができないため、「生きものではない」(米ジョンズ・ホプキンス大学教授)との説もあるとか。何層もの脂質でできた保護膜に覆われたたんぱく質(DNA)だという。「新型コロナ」ということは「旧型」はどれか? SARS(重症急性呼吸器症候群、2002年)やMERS(中東呼吸器症候群、2012年)等が今となっては「旧型」なのだという。今回、どこが「新型」なのか? わかったようでわからないことが多過ぎる。メディアは「いまさら聞けないコロナの基本のキ」という特集をなぜやってくれないのか。
さて、もうすっかりおなじみになった「クラスタ―」。感染者の集団のこと、いわば「団体」だ。専門家は「クラスターを潰すことが重要」と言うが、感染ルートを追跡する意味で刑事が足取り捜査をするイメージだ。
「パンデミック」。「世界的な大流行」のこと。医学用語だから仕方がないが、テレビで専門家でもないコメンテーターにしたり顔で乱用されると、何か耳障りに感じる。「パンデミック」と言った後で「世界的流行のことですが……」と補足、翻訳するなら、「最初から日本語でどうぞ」と思うのは私だけか。
<ロックダウンはRかLか?>
続いて「オーバーシュート」。「爆発的感染拡大」の意味だという。今回の新型コロナの震源地の中国・武漢やイタリアの「爆発」がそうで、日本は何とか「オーバー」を食い止めた国に入る。「オーバーシュート」した国や、それを抑止するために強権発動されたのが「ロックダウン」。最初に耳にした時、「ROCK」(岩)なのか「LOCK」(鍵)なのかがピンとこなく、Lが正解とわかるまで少し時間がかかった。日本人が通常使う外来語にはない。「都市封鎖」の方がよほどわかりやすかった。
<「キープ・ソーシャル・ディスタンシング」は気取りすぎではないか>
初耳だったのは「ソーシャル・ディスタンス」。「社会的距離」等と直訳されるとニュアンスはぎこちないが、密集しないで「離れていましょう」との意味は理解できた。ただ、「キープ・ソーシャル・ディスタンシング」等と、お洒落? な言い方をされると「何もそこまで気取らなくても」と思ったりもした。
「テレワーク」と「リモートワーク」が混在して使われたが、大した違いもないのだろう。マスク不足は長い間深刻だったが、テレビが連呼した「特にサージカルマスクが不足です」は首をかしげた。「メディカル」が内科なのに対し、「サージカル」は外科という意味だろうが、「医療用マスクが足りません」と呼びかければ済むことではないか。
大型連休前の小池百合子東京都知事の「ステイホーム」は、「おうちにいて」とともに、女性ならではの響きが素直に届き、安倍晋三首相よりも発信力があった。ただ、小池さん、東京都と他県の取り組みの違いを問われ、「東京はメガシティですから」とか、「都民の命を守るのが私のミッション(使命)であり、エネルギーです」。緊急事態の解除には「ロードマップをつくります」とカタカナのラッシュで、「ピークアウト」(減少に転じる)を知らなかった。
『一流のエンジニアはカタカナを使わない』(片桐あい著・さくら舎刊)という一冊がある。「ステイホーム」の中で読んでみるか。何かアイロニー(皮肉っぽい)に満ちたコラムになった。ストレスのせいです。コロナが悪いのだ。早く「収束」ではなく「終息」を祈りたい。
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