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2021年1月

2021年1月 8日 (金)

徒然エッセイ第44回 仁義なき広島の自公戦争

 新年、二〇二一年は国際的には選挙の少ない年だ。アメリカは一年余に及ぶ大統領選の喧騒がようやく終わった。中国はそもそも「選挙」なるものがあるのか? ロシアは9月に下院議員選挙があるが、プーチン大統領の交替にはつながらない。 大統領制のフランスや隣国・韓国も任期切れの年ではない。議院内閣制のイギリスは議会解散の状況にない。ドイツが9月の総選挙でメルケル首相の勇退が内定している程度。主要国で国政選挙があるのは日本ぐらいだ。衆院議員の任期が十月に満了する以上、秋までに衆院解散・総選挙が確実に行われ、新首相(菅義偉首相の再任も含め)が選出される。

 衆議院の定数は四百六十五。小選挙区が二百八十九、比例が百七十六。このうち、与党・公明党が小選挙区に公認候補を立てるのはわずか九(前回二〇一七年)。大半の小選挙区では自民党候補を支援して「比例は公明に」とバーターを呼びかける。一方、自民は公明が候補を立てる小選挙区には候補を見送り公明支援に回る。これが二十年続く自公連立政権の根幹となる基本構造なのだ。

<広島三区の激闘>

 ところがその「自公連携」を基盤を脅かしかねない事態が衆院広島第三区で起きている。自公ともに公認候補を立てて真っ向勝負する構えなのだ。かつての暴力団抗争で有名な広島での「仁義なき戦い」を彷彿とさせる「自公対決」となりつつある。

 広島三区の現職は河井克行元法相。二〇一九年の参院選での妻・案里氏の選挙を巡る大規模買収事件で起訴され、自民党を離党している。当選した案里議員も陣営幹部の有罪が最高裁で確定し、連座制適用で議員失職が濃厚だ。このため、自民党広島県連は昨年夏から三区の次期衆院選候補者の選考を進めていた。ところが公明党が十一月下旬に比例中国ブロック現職の斉藤鉄夫副代表を広島三区の公認候補として擁立することを公表した。山口那津男代表が菅首相にも伝え、直後に現地入りして「揺るがない決意」を明確にした。

「(河井事件で)政治不信を招いた後では自民党候補が誰であっても支援できない」と独自候補擁立に踏み切ったのだ。これに対し、自民党広島県連は猛反発、候補者の公募を敢行、十人が応募し、公開討論会まで開催して候補者を絞り、石原林太郎県議に内定、党本部に公認申請して一歩も引かない構えだ。

 公明党は「広島の自民党は池田勇人、宮沢喜一の両首相を生んだ宏池会の牙城。そこで十月には自民党県連にも岸田さん(宏池会会長、広島一区)にもこちらの考えを伝え、事前調整を求めたが無視された」と憤り、「自民党が候補擁立を断念しないなら、他の選挙区でも自民党、特に岸田派の候補の支援はできない」と揺さぶっている。山口代表は「政治の信頼回復と与党としての議席確保へ大局的判断をすべきだ」として、政局全体を踏まえた政治判断を自民党に迫っている。

<「頑張ってください」と「頑張ります」の熱量の違い>


 ここで首都圏の自民党若手A代議士から聞いた話を紹介しよう。Aは自民党公認で出馬、公明党の支援を受けて当選している。

「私は自分の後援会やパーティでは、支援者から『先生、頑張ってください』と言われる。ところが公明党や支持母体の創価学会関係の集会では『頑張りますから』と握手を求められ、励まされる。『頑張ります』は『自分たちが支援の輪を広げます』という意味で本当に心強い。応援の熱量が違うんです」。

 自民党の新人候補や地盤が固まっていない若手議員からすれば、公明党・創価学会の支援は選挙区によっては万単位の票が期待できる当選への「頼みの綱」となる。A代議士は「あの支援の熱量を一度経験した身にとっては、万一、支援を受けられないと考えただけで恐ろしくなる」と本音を漏らす。「自公広島の乱」の行方は広島に限らず、全国の自民党候補にとって気がかりな“地雷”なのである。

 自公の連立政権は一九九九年から民主党政権の三年を挟んで現在まで足掛け二十年になる。広島での局地戦が「連立」の基盤まで揺るがす全面戦争になるとは思えないが、自民党広島県連と党本部、自民党と公明党の党本部がどんな「大局的判断」をして「仁義なき戦い」をどう“手打ち”させるのか興味深い。

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