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2021年4月26日 (月)

徒然エッセイ第48話 「2020東京オリンピック」をレガシーに

 「二〇二一年」に開催される東京オリンピック・パラリンピックは、なぜか「東京二〇二〇」とネーミングされている。一年延期が決まった際、エンブレムとの関連で小池百合子東京都知事が「二〇二〇」にこだわったらしい。

 そのオリンピック開幕まで百日を切り、名実ともにカウントダウンに入った。「復興五輪」の名の下、福島県の「Jヴィレッジ」をスタートした聖火リレーは南下を続け、途中で新型コロナの感染拡大を防ぐために予定が変更されたりしながらも、日程通りだと五月初旬の沖縄から九州に戻って北上を始める。菅義偉首相はバイデン米大統領との首脳会談で「東京二〇二〇」に触れ、共同声明でも「バイデン大統領は東京五輪・パラリンピックを開催するための菅首相の努力を支持する」明記された。もう、大きな流れは七月二十三日の開会式に向かってひたすら突き進んでいる。ただ、「コロナ禍の中のオリンピック開催」には懸念の声が根強い。世論の「共感」をどれだけ得られるかが「東京二〇二〇」の残された高いハードルだ。

ゴタゴタ続きの東京五輪

 すっかり忘れられているが、東京は二〇一六年のオリンピック招致に名乗りを上げ、「南米初開催」のブラジル・リオデジャネイロに惨敗している。一一年の東日本大震災を受け、「復興五輪」と銘打って一三年に何とか招致に成功した。当時の安倍晋三首相は「フクシマはアンダーコントロール」と強引だったが、滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」のプレゼンテーションが効いた、という評が高い。

 こんなにゴタゴタ続きのオリンピックも珍しい。招致汚職疑惑絡みでJOC(日本オリンピック委員会)会長の辞任、メイン会場である新国立競技場の設計のやり直し、ロゴマーク変更、小池都知事就任後は何カ所かの競技会場の見直し騒動(結局は元の案に戻ったが)、さらには「東京の夏は暑い」と初めて気がついたかのようにマラソン、競歩の札幌開催への変更・・・。「コロナ」で一年延期した後も森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の女性蔑視発言での辞任、開閉会式の統括ディレクターのタレント侮辱発言での辞任と留まることを知らなかった。

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 イラスト・櫻井砂冬美

戦争で中止はあるが延期は初

 東京五輪は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で一年延期されたが、近代オリンピック史上では延期そのものが初めてのことだ。オリンピックが中止されたのは戦前、戦中のベルリン、東京、ロンドンの夏季大会と札幌、コルチナ・ダンペッツォ(イタリア)の冬季大会だけだ。いずれも第一次、二次世界大戦が理由だった。そういう意味で、感染症という「人類共通の敵」に立ち向かうという視点に立てば、安易に「中止論」に流れるべきではないのかもしれない。確かに「こういう時こそ開催に意義がある」とも言えなくもない。ただ、「人類がコロナに打ち勝った証し」(菅首相)と「完了形」で意義を後付けするのは傲慢過ぎないか。

 東京オリンピックに関わるIOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)、東京都、組織委員会、日本政府を「五者」という。当事者だけに中止論や再延期論は全く聞こえてこない。一時あった「無観客開催」案も排除された。海外からの観客は受け入れないことになったが、裏返せば「制限付き開催」が既定路線だ。遅れていた競技ごとの代表選手の選考もここへきてかなり進んでいる。競技会場ごとの観客をどこまで制限するかだけが残された大きな課題といっても過言ではない。

世論の共感度が課題

 ただ、世論の「共感」度はまだまだ低い。海外観客の排除でコロナ感染への恐怖感からの「開催反対」や「再延期」の声は少し下火になったが、世論調査ではまだ、半数近くが開催に懸念を抱いている。「どうせ、開催するんだろう」とか「ここまできたら勝手にどうぞ」という諦めに近い感情が世論の底流にある。

「コロナ禍の中での開催」に逆説的意義を見出そうとするなら、「東京二〇二〇」を「肥大化」や「商業オリンピック」等、近年課題となってきた「オリンピック改革」に繋げてこそ、評価されようというもの。それには開催までの残り少ない日数を単なるカウントダウンだけに終わらせず、新たな「共感」を呼び起こす何かが求められるのではないか。それでこそ「東京二〇二〇」がレガシーとして後世に語り伝えられるというものではないか。

 

※この連載はブログ「徒然エッセイ(http://pict-dd.cocolog-nifty.com/tsurezure/)に転載されています。

 

イラスト : 櫻井砂冬美

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