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2023年12月

2023年12月 1日 (金)

第88話 悩ましい高齢者の運転免許返納

 私事で恐縮だが、高齢者の運転免許更新についての悩みを綴る。この秋、高校時代の同期で、今、首都圏に住む仲間達の首都圏同期会がコロナ明けで久しぶりに開かれた。1学年450人を超えるマンモス県立高校。富山県で1,2の進学校で、ほぼ全員が大学へ進学、高度成長期に地元の他、東京、関西等全国の企業に就職した。今は定年を過ぎ、リタイヤ組が大半で、首都圏に生活の拠を構える昔の仲間の集まりだ。全員が76、77歳。半分は喜寿を過ぎている。出席して驚いた。すでに鬼籍に入った人が74人、同期会は物故者への黙祷でスタートした。6人に1人が亡くなっている計算だ。齢を感ぜずにはおられなかった。ただ、いわゆる年次がまたがった同窓会ではなく、同学年でともに学んだり、遊んだりした仲間で、今も元気な連中が集まったので、終始賑やかな会ではあった。

「後期高齢者」という呼称も文句あり

「オレ達全員、後期高齢者(75歳以上)なんだよな」「そうだよ。だけどその『後期高齢者』といういい方、気にくわないな」「官僚が考えた呼称は、いかにも情というものがないよな」「いっそのこと『末期高齢者』とでも言ってくれよ、と逆らいたくもなるな」

 元気な会話が続いたが、寄る年波には勝てず、話題は健康、医療、介護、年金、孫の話……。10年ほど前は再就職などが話題だったが、もうそれは過ぎ、車の運転免許を返上するかどうかも俎上に上った。かくいう私も免許の更新を控えていた。街中に住み、車の運転はほとんどしないのに返上しようかどうか迷っていた。返上してしまうと「末期高齢者」とはいわないまでも、「超後期高齢者」の仲間入りをする気がして踏み切れないでいた。子ども達が「返上したら?」とあっけらかんというので、逆にムカッと来て反発し、更新することにした。家族が親に返上を薦める場合は頭ごなしではなく、巧みに穏やかに誘導しないと“年寄りの反逆”を招きかねないので、モノのいい方には要注意ですぞ。

認知機能検査 16枚のイラスト

 75歳以上の運転免許の更新は、違反歴がない人でも認知機能検査を受けなければならない。実はこの認知機能検査で面白い体験をした。検査では4枚ずつ4回計16枚のイラストを見せられる。「覚えておいて下さい」といわれたが次々にイラストが現れては消えていき、記憶するのは簡単ではない。イラストはこうだった。①機関銃②セミ③牛④親指⑤トウモロコシ⑥電子レンジ⑦ハサミ⑧メロン⑨鍋⑩ドレス⑪トラック⑫クジャク⑬琴⑭チューリップ⑮ドライバー(工具)⑯椅子……の16枚。

 これらを次々と見せられ、数秒で伏せられた後、教官が「覚えているものを書き出して下さい」。全く関連性のないものをバラバラに見せられ「覚えているのは?」とは「なんともアコギで意地悪な」と思いつつ悪戦苦闘した。思い出せたのは10枚に届かなかった。「知らないうちに認知症になっているのかな」とショックを受けていると、今度は教官が「動物ではどんなものがありましたか?」「台所にあるものは?」「食べるものは?」等とジャンルを特定してヒントをくれた。ジャンル別だとなんとか記憶を絞り出せたが、16問中思い出せたのは13問。教官は「13問なら上出来ですよ」と褒めながら慰めて?くれた。後でわかったことだが、この認知機能検査だけで不合格になることはなく、極端に悪かったり、その日が何年何月何日何曜日で、今、何時ごろか、など時間に関する認識が劣っていると、医師による検査に回され、医師が認知症と判断した時のみ運転免許取消となる仕組みだ。「そんなことなら最初からそう言っておいてよ」と愚痴りたくもなった。しかし、テストの後、高齢者向けの講習を受け、無事、新しい免許証が交付された。ただ。その後、まだ車を運転していない。先日、息子夫婦が遊びに来て家族でゴルフに出かけた時も息子がハンドルを握った。

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シニア割引の本人証明

 高齢者による交通事故は増えている。高速道路の逆走やブレーキとアクセルを踏み間違えてコンビニに突っ込む事故も相次ぐ。被害者はもちろん、加害者側にとっても悲劇だ。ただ、地域によっては車は欠かせない移動手段でもある。その兼ね合いが難しい。今回、私は免許返上への決断がつかず、子どもからのアドバイスに逆らって免許証を更新した。ただ、その後、免許証は映画を見る時などのシニア割引の「本人証明」以外には利用していない。来年の同期会で「次の更新はどうする?」と話題に出してみようか、と思う。

 イラスト:櫻井砂冬美

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