第90話 拝啓 バイデン米大統領殿 トランプ阻止へ再選出馬断念を
謹啓 第46代米大統領、ジョー・バイデン閣下。
突然、お手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。しかも大統領選への出馬断念をお願いするという内容で、非礼をお詫びします。しかし、その趣旨は11月の大統領選でトランプ前大統領が当選でもしたならば、世界が大混乱すること必定だからです。早期に民主党の新進気鋭の候補に挑戦の機会を譲り、トランプ時代の再来を阻止して頂きたいのです。
今年は地球上の人口の過半に近い55か国で選挙が行われる稀有な年です。ロシア大統領選がプーチンによる「選択なき選挙」である以上、注目されるのはアメリカ大統領選です。
現職敗北の例 数多し
州の連合体であるアメリカ合衆国の大統領選は日本人にはわかりにくいのですが、半世紀に及ぶ米議会の重鎮のあなたなら十分ご存でしょう。私なりに戦後の大統領選をファクトチェックしてみました。確かに現職大統領が再選出馬した場合、民主、共和党ともその党の指名争いで敗れたことは一例もありません。しかし、本選挙となると現職落選のケースは枚挙に暇がないのです。フォード(共)がカーター(民)、そのカーターがレーガン(共)に、ブッシュ(父、共)がクリントン(民)に、最近ではトランプ(共)があなたバイデン(民)に敗れています。党の指名争いでは勝てても、本選挙で現職が敗れることはしばしばあるのです。
失礼ながら、今年の米大統領選は「老老対決」と揶揄されています。大統領、あなたは八十一歳。当選しても任期満了時は八十六歳。最大の弱点は老齢です。「大統領職をこなしている」と反論されますが、百歩譲って大統領職はOKでも十一月五日の本選挙まで候補としてハードな選挙キャンペーンを戦い続けられるか心配でなりません。それにアメリカのどの世論調査でもバイデンVS.トランプだと、あなたが劣勢でその差は開いています。J・F・ケネディ元大統領の甥のロバート・ケネディ・ジュニア氏の第3党からの出馬の動きはあなたにとってさらに不利です。アメリカの若者はパレスチナでのイスラエルの「やり過ぎ」に批判的で、当初、明確にイスラエル支持を明言されたあなたからバイデン離れが広がっています。 そこで大統領、予備選が集中するスーパーチューズデー(3月5日)までに出馬を断念されるようお願いしたいのです。それはトランプ前大統領を勝たせたいからではなく、逆に彼に勝利させたくないからです。彼も77歳。4件の刑事事件、91の罪状で起訴されています。民事訴訟は数え切れません。
トランプ時代の検証
「トランプの4四年間」を検証してみました。「地球温暖化なんて証拠がない」とパリ協定から脱退しました。また、日本が長年努力してまとめたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定からも離脱しました。イランの核開発阻止のため、中国、ロシアや欧州、日本など主要国も賛同した「イラン核合意」からも脱退しました。徹底した“壊し屋”でした。米有力紙の調査では在任中、3万回のウソをついたとのことです。
万一、彼が当選したら、ウクライナ支援から撤退するのは確実です。喜ぶのはロシアのプーチン大統領です。パレスチナ問題でも徹底したイスラエル寄りに転じるでしょう。トランプはNATOからの離脱まで口にしています。まさかとは思いますが、ヨーロッパとの対立は険しくなります。世界秩序が崩れます。彼の唯一のなだめ役だった安倍晋三元首相はもういません。トランプ政権当時のボルトン補佐官は「大統領は朝と夕方には気分次第で言うことがコロコロ変わり、自ら任命した高官も『無能』の一言で解任し、自分と違う考えの報道には『フェイク』と決めつけた。まるで大きな赤ん坊だった」と著作に書いています。
トランプ時代の再現阻止へ決断を
トランプ阻止へどうすべきか。大統領、あなたが「再選不出馬」を決断し、「トランプに勝てる候補」にタッチするのです。有力候補にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(56歳)がいます。次の大統領選の民主党の有力候補で、今はあなたをサポートしています。
8月の民主党大会までに各州の予備選は終わり、代議員が投票する候補は内定しています。ただ、幸い「代議員は良心に従って投票し、党大会で決める」という党規約があります。現職のカラマ・ハリス副大統領はこの4年間、ほとんど実績を残していません。副大統領候補ともども党大会で選び直しませんか。
失礼の言の数々はお詫びします。健全なアメリカ、日本等、同盟・友好国との関係、国際情勢全般を熟慮され、「良心に従い名誉ある撤退」の決断を伏してお願い申し上げる次第です。
イラスト:櫻井砂冬美
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