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2024年1月

2024年1月30日 (火)

第90話 拝啓 バイデン米大統領殿 トランプ阻止へ再選出馬断念を

 謹啓 第46代米大統領、ジョー・バイデン閣下。

 突然、お手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。しかも大統領選への出馬断念をお願いするという内容で、非礼をお詫びします。しかし、その趣旨は11月の大統領選でトランプ前大統領が当選でもしたならば、世界が大混乱すること必定だからです。早期に民主党の新進気鋭の候補に挑戦の機会を譲り、トランプ時代の再来を阻止して頂きたいのです。

 今年は地球上の人口の過半に近い55か国で選挙が行われる稀有な年です。ロシア大統領選がプーチンによる「選択なき選挙」である以上、注目されるのはアメリカ大統領選です。

現職敗北の例 数多し

 州の連合体であるアメリカ合衆国の大統領選は日本人にはわかりにくいのですが、半世紀に及ぶ米議会の重鎮のあなたなら十分ご存でしょう。私なりに戦後の大統領選をファクトチェックしてみました。確かに現職大統領が再選出馬した場合、民主、共和党ともその党の指名争いで敗れたことは一例もありません。しかし、本選挙となると現職落選のケースは枚挙に暇がないのです。フォード(共)がカーター(民)、そのカーターがレーガン(共)に、ブッシュ(父、共)がクリントン(民)に、最近ではトランプ(共)があなたバイデン(民)に敗れています。党の指名争いでは勝てても、本選挙で現職が敗れることはしばしばあるのです。

 失礼ながら、今年の米大統領選は「老老対決」と揶揄されています。大統領、あなたは八十一歳。当選しても任期満了時は八十六歳。最大の弱点は老齢です。「大統領職をこなしている」と反論されますが、百歩譲って大統領職はOKでも十一月五日の本選挙まで候補としてハードな選挙キャンペーンを戦い続けられるか心配でなりません。それにアメリカのどの世論調査でもバイデンVS.トランプだと、あなたが劣勢でその差は開いています。J・F・ケネディ元大統領の甥のロバート・ケネディ・ジュニア氏の第3党からの出馬の動きはあなたにとってさらに不利です。アメリカの若者はパレスチナでのイスラエルの「やり過ぎ」に批判的で、当初、明確にイスラエル支持を明言されたあなたからバイデン離れが広がっています。 そこで大統領、予備選が集中するスーパーチューズデー(3月5日)までに出馬を断念されるようお願いしたいのです。それはトランプ前大統領を勝たせたいからではなく、逆に彼に勝利させたくないからです。彼も77歳。4件の刑事事件、91の罪状で起訴されています。民事訴訟は数え切れません。

トランプ時代の検証

「トランプの4四年間」を検証してみました。「地球温暖化なんて証拠がない」とパリ協定から脱退しました。また、日本が長年努力してまとめたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定からも離脱しました。イランの核開発阻止のため、中国、ロシアや欧州、日本など主要国も賛同した「イラン核合意」からも脱退しました。徹底した“壊し屋”でした。米有力紙の調査では在任中、3万回のウソをついたとのことです。

 万一、彼が当選したら、ウクライナ支援から撤退するのは確実です。喜ぶのはロシアのプーチン大統領です。パレスチナ問題でも徹底したイスラエル寄りに転じるでしょう。トランプはNATOからの離脱まで口にしています。まさかとは思いますが、ヨーロッパとの対立は険しくなります。世界秩序が崩れます。彼の唯一のなだめ役だった安倍晋三元首相はもういません。トランプ政権当時のボルトン補佐官は「大統領は朝と夕方には気分次第で言うことがコロコロ変わり、自ら任命した高官も『無能』の一言で解任し、自分と違う考えの報道には『フェイク』と決めつけた。まるで大きな赤ん坊だった」と著作に書いています。

トランプ時代の再現阻止へ決断を

 トランプ阻止へどうすべきか。大統領、あなたが「再選不出馬」を決断し、「トランプに勝てる候補」にタッチするのです。有力候補にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(56歳)がいます。次の大統領選の民主党の有力候補で、今はあなたをサポートしています。

8月の民主党大会までに各州の予備選は終わり、代議員が投票する候補は内定しています。ただ、幸い「代議員は良心に従って投票し、党大会で決める」という党規約があります。現職のカラマ・ハリス副大統領はこの4年間、ほとんど実績を残していません。副大統領候補ともども党大会で選び直しませんか。

 失礼の言の数々はお詫びします。健全なアメリカ、日本等、同盟・友好国との関係、国際情勢全般を熟慮され、「良心に従い名誉ある撤退」の決断を伏してお願い申し上げる次第です。

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イラスト:櫻井砂冬美

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2024年1月 4日 (木)

第89話 リーダーを選ぶ年 2024年

 このコラムの原稿を書いているのは「旧年中」だが、読者が目にするのは新年明けてからだろう。月刊誌のコラムは執筆から発行までのタイムラグがあってコラムニスト泣かせだ。まして“年またぎ”はとりわけ神経をつかう。しかし、リスクを覚悟で2024年という年を展望してみる。すると近年稀に見るほど、世界の主要国でリーダーを選ぶ年であることに気付く。台湾、ウクライナ、ロシア、アメリカ、ほかにも大統領選ではインドネシア、メキシコ、総選挙ではグローバルサウスの盟主のインド、そして隣国・韓国、EUの議会選挙まである。そして日本。それに東京都。地球上の人口の過半を占める世界70か国、地域で首脳を直接選ぶ選挙や議院内閣制の国では総選挙が実施される。いずれも国際情勢に密接に関わる国(地域)ばかりだ。

 ウクライナ、パレスチナに次ぐ「世界第3のホットスポット(緊張地帯)」とされる台湾。1月13日に行政府トップの総統選挙が行われる。親米路線の蔡英文総統の任期満了による選挙。蔡路線を引き継ぐ与党・民進党の頼清徳副総統と野党・国民党の侯友宜新北市長、民衆党の柯文哲前台北市長の三つ巴の争いだ。中国は頼氏を「掛け値なしの台湾独立工作者。戦争を作り出す者」と名指しで批判する一方、国民党幹部を複数回訪中させたり、台湾学生の北京旅行を企画するなど融和工作を展開した。しかし、野党候補の一本化が決裂、現状では民進党の優勢が伝えられるが、どの国でも選挙は水物だ。同時に行われる立法委員(国会議員)選挙では民進党の過半数割れの可能性もあり、選挙結果次第では台湾の内政だけでなく、中台、米台、さらには米中関係にも影響しかねない。

 また、ロシアの侵略を受け続けるウクライナのゼレンスキー大統領は5月に5年の任期が満了する。平時なら春に大統領選挙が行われるが、現在は戦時で戒厳令が発令中。戒厳令下では選挙の実施は禁止されているが、大統領府顧問だったオレクシー・アレストビッチ氏が出馬の動きを見せ、戦況も膠着状態だ。ただ、最近の世論調査では「大統領選は戦争後に延期すべきだ」が81%で、「戦争中でも実施すべきだ」は16%。延期論が大半だ。

 一方、ロシアでは3月17日に大統領選挙が予定される。プーチン大統領任期は本来なら今年で終わりだったが、憲法を改正し、改選を続ければ2036年まで大統領であり続けられることになった。次々とライバルを粛清し、立候補させない強権を振るってきただけに「8割以上の多数で通算5選される」ことは確実。モスクワに住む知人は「わが祖国に選挙というものは存在しない」とロシア人特有のアネクドート(風刺の小話)を口にする。

 さて、アメリカ。11月5日の本選挙に向け、1月から民主、共和両党の予備選挙、党員集会が各州で順次行われる。7月の共和党、8月の民主党大会で正副大統領候補が確定するが、「アメリカ政治史上、最低の選択」になる様相だ。現職として史上最高齢を更新中の81歳のバイデン大統領(民主)と77歳と少しだけ若い?が4件91の罪状での刑事裁判で起訴されているトランプ前大統領(共和)の争いが濃厚だからだ。民主党のマンチン上院議員や故ケネディ元大統領の甥のロバート・ケネディ・ジュニア氏が無所属で出馬する構えだが、戦後、アメリカでは無所属や第三政党で大統領に当選した例はない。長丁場の選挙戦、特に夏の両党党大会までに「サプライズがないのか」とワシントンの有識者は気をもんでいる。

 日本も9月に自民党総裁選が行われる。それまでに衆院解散・総選挙があるのかないのか、それ以上に岸田政権がいつまでもつのか? いずれにしても論理的には岸田文雄首相の再選も含め、日本のリーダーが「選び直される」ことになる。なお、7月には東京都知事選も予定される。小池百合子知事が3選を目指すのか、小池カードを国政の政局に利用しようという蠢きも自民党内にあり、「乱」が起きるのか?戦後、都知事が任期途中で辞任した例はあるが、出馬して落選した例はないことだけを付記しておこう。

イラスト・櫻井砂冬美

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