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2025年8月

2025年8月 2日 (土)

第122話 大阪万博「フランス館への誘い」

以下は、私が広島日仏協会会長として、協会報に寄稿した大阪万博「フランス館」について視察体験記の再録だ。 

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 大阪・関西万博に出かけてきました。各国のパビリオンの中には先端テクノロジーを前面に出したり、「力」を誇示する国もあるのですが、ひときわ人気を集めているのがフランス館です。その底流に流れるのは「伝統と文化」です。フランス館のルポをお伝えします。

 私が出かけたのは6月19日、在日フランス商工会議所主催の「カクテル・ネットワーキング」という交流会でした。招待を受け、事前登録し、特別なパスをいただいていたので、万博会場に入るのに長い列に並ぶことはありませんでした。また、交流イベントの後、招待者がグループ分けされ、フランス館だけでなく、アメリカ、ドイツ、スイスなどのパビリオンも並ばずに見て回れ、後は自由行動で夜空のドローンショーも満喫できて感謝、感激でした。

「カクテル・ネットワーキング」には全国の日仏協会関係者ら約100人が集まりました。ジェローム・シュシャン商工会議所会頭が挨拶、「フランス館は毎日3万人の見学者があり、各国のパビリオンでは最も早く200万人を達成、人気のパビリオンになっている」と鼻高々でした。

 フランス館は万博会場のメインゲートの東入口から入るとすぐに目に入る場所にあります。赤、青、白3色のフランス国旗がたなびき、4階建ての建物そのものがアート作品のようでした。夜は照明に浮かび上がり、近くのアメリカ館が「いかつさ」を感じさせるのに対し、品格のある洒落たデザインの館は「エレガントを追求するフランス」を印象付けています。

テーマは「愛の讃歌」。「お互いが見えない魔法の糸で結ばれている」という「赤い糸の伝説」に因み、「自分への愛」「他者への愛」「自然への愛」をコンセプトにしている、という。それは昨今の「分断」と「対立」へのアンチテーゼなのでしょうか。

 フランス館に入るとまず、超有名ブランド企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が企画した展示が並んでいます。言わずと知れた「ルイ・ヴィトン」はあのバッグを始めとする革製品のブランド、「モエ・ヘネシー」はドンペリニオンなどで知られるシャンパーニュやコニャックなど高級酒のブランド。世界的にも有名な二大ブランドが合併した会社です。ルイ・ヴィトンの大型トランク84個が天井まで壁一面に並び、それが鏡に映り、万華鏡のように広がり、「インスタレーション」(空間芸術)となっていたのは圧巻でした。

館内にはあちこちに「考える人」で有名な近代彫刻の父・オーギュスト・ロダンよる作品「手」が置かれています。「手作り」をアピールしており、それは「職人技の手仕事への誇り」であり、「芸術への熱情」でもあるという。「新たなテクノロジーは取り入れるが、伝統を消してはならない」という決意の表明なのでしょう。

 続いて「ワインの国フランス」のコーナー。「愛とアルザスワインほど悩みを忘れさせてくれる良い方法はない」というジョゼフ・グラフの言葉が掲示されています。ここではワインは飲めませんがが、交流会でいただいた端麗で洗練されたアルザスワインの香りがのどに残っている感じがしました。アルザス地方はボルドー、ブルゴーニュに続くフランスを代表するワインの銘醸地です。

 ワイン通でない私の聞きかじりですが、何でもワインの格付けが始まったのが1855年のパリ万博からだそうです。当時、すでに世界中の美食家にワインは愛飲されていましたたが、「どれが良いワインかよく分からない」との声が多く、ナポレオン3世が「フランスワインを世界にアピールせよ」と命じたそうです。これを受けてボルドーワインを1級から5級に分ける格付けがなされ、ワインがより分かりやすくなり、世界に広まっていったと聞きました。当時、世界の覇権国の「イギリスに負けるな」という思いがあり、「スコッチのイギリス」に対し、「ワインのフランス」の魅力を世界に発信したのです。

 先に進むと真っ白いオブジェが現れる。ともに海に浮かぶ宗教施設であり、世界遺産として観光名所になっているモン・サン・ミシェル修道院と宮島・厳島神社の大鳥居が3Dプリンターで再現され、それが“しめ縄”で繋がっているアイデアには微笑みました。広島日仏協会会長として一昨年にモン・サン・ミシェルを訪れ、昨年はお返しの代表団を日仏協会主催の「パリ祭」にお迎えしただけにしばらく思い出に耽りました。宮島のある廿日市市とモン・サン・ミシェル市は友好提携協定を結んでおり、廿日市市への外国人旅行者はフランス人が最多ですが、万博を契機にさらに伸びることを期待したいものです。

 次の展示へ歩を進めると、少し大きめだが真っ白なディオールのハンドバックが気品さを醸し出し、やはり純白のドレスやオートクチュール(高級注文服)が400点も展示され、多くの女性の目が吸い寄せられていました。ここでも「手作り」と「ファッションの国フランス」を再認識しました。

 出口には大人2人でも抱えきれないほどのオリーブの木が植えられていました。樹齢千年の古木で、万博のためにわざわざ南フランスから運んできたのだという。樹液が出ており、「触るとご利益がある」と言うので、皆さん手でさすっていました。さて、どんな幸せがもたらされるのか・・・。フランス館の一角にはフランス料理やワインが堪能できるレストランや記念グッズお土産コーナーもあり、大変な人気を博しています

 なお、日本では「パリ祭」と言われるフランス革命記念日の7月14日にはサンドリン・ムシェ在京都フランス総領事主催の祝賀行事がフランス館で開かれました。フランス政府からはナタリ・ドウトル観光担当大臣が出席、広島からは在広島フランス名誉領事の飯田政之・広島テレビ会長が招待され、出席しました。ドウトル観光相は翌15日に来広、平和記念碑に献花した後、横田副知事ら県の観光担当者らを交え、フランスと広島の観光交流について突っ込んだ意見交換をしました。また、8月8日にはモン・サン・ミシェル市と友好提携関係にある廿日市市主催の観光プロモーションイベントがフランス館で開催されました。松本太郎市長や観光団体関係者らが出席、フランスを始め外国人旅行客や全国から訪れる入館者に廿日市市の「体験、宿泊、食」に関する観光コンテンツをPRし、商談会も行われました。廿日市市が「発祥の地」とされ、近年、ワールドカップが開催されている「けん玉」のアトラクションも人気を集めました。

 万博は10月13日まで続きます。フランス館は事前予約がなくても入れますが、人気館なので入館待ちの列ができることが多く、午前の早い時間が比較的空いています。興味のある方は今からでもトライしてみてはいかがでしょう。

第121話 大阪・関西万博ルポ「ウクライナの訴え」

 2025年国際博覧会(大阪・関西万博)へ出かけてきた。開幕前はネガティブな報道が多かったが、このところ入場者のペースが上がっている。人それぞれ関心の向きも違うが、私は国際情勢とリンクさせながら何カ国かのパビリオンを見て回った。

 お薦めは「コモンズ館」。複数の国が入っている共同館のこと。万博には158カ国・地域が参加しているが、94カ国・地域がコモンズ館AからF館でブースを展開している。以下その雑感を記すが、強いメッセージを放っていたのはウクライナだった。

 まず、コモンズ館Cのイスラエルのブースを見た。中央に紀元前二世紀の大きな「要塞の石」が置かれてある。係員が「please touch」というので触ってみた。「古代よりこの地にユダヤ人が深く根付いていたことを物語る」との説明がある。第二次大戦後の1947年に国際連合でパレスチナ分割決議が西側だけでなくソ連の賛成も得て可決された。翌48年に「イスラエル」が建国される。これが今日まで続くイスラエルとアラブ諸国の対立の主因だ。「要塞の石」は「紀元前からここはユダヤ人の土地。第二次大戦後に自分たちが割り込んで来たのではない」と強調したいようだ。

 その反対軸としてコモンズ館Dのパレスチナのブースを見た。スタッフが胸にスイカのブローチを付けている。第三次中東戦争(1967年)で、イスラエルに占領されたガザ地区ではパレスチナの旗の使用が禁止になった。その旗と同じ色の赤、白、緑、黒のスイカの断面のブローチなのだ。「連帯と抵抗」の意志表明だ。イスラエルと対立するイラン館を探したが、イランは資金難で途中で出展を断念、その場所に日本国際博覧会協会が石川県の輪島塗の大型地球儀「夜の地球」を飾った。地球儀には「対立や分断を越えて他に思いを巡らす」意味が込められ、世界の主要都市の夜景が輪島塗の金の蒔絵に浮き上がっていた。

 コモンズ館Cのウクライナの展示を見ようとした。ここだけは人気があり、コモンズ館では珍しく20分ほど入場待ちの列に並んだ。ブース全体が国旗の青と黄色で装飾されている。18種類の「商品」が棚に陳列され、「値札」が下がっているが「値段」は記されていない。バーコードを専用のスマートフォンでスキャンすると動画が流れ、英語と日本語の字幕が現れる。いくつか紹介しよう。

 ①青いスーツケース=「戦争で自宅を離れざるを得なかった」 ②地下鉄の「M」のマーク=「学校は破壊され、子ども達はいま、地下鉄で勉強している」 ③血に染まったおもちゃ ④爆撃で燃えたが、何とか読めるノート ⑤オスカー像(アカデミー賞で授与される像)=「ウクライナのジャーナリストは恐怖を世界に伝えることに命を懸け、2024年のオスカーのベスト・ドキュメンタリー賞を獲得した。ウクライナには自由で独立した報道がある」 ⑥青い地球儀=「ロシアの侵攻はウクライナの食糧供給を停め、世界の食糧安全保障に危険をもたらした。世界のヒマワリ油の50%はウクライナ産なのに」 ⑦ノートパソコン=「戦争に勝利するには情報戦争にも勝たなければならない」……。

 それぞれの字幕には最後に必ず「Not for Sale」(売り物ではない)と出る。入館者に「考えてほしい」と求めている。ロシアの侵略に対して「領土は売らない」との固い意志が間接的に伝わる。「さてロシアは?」と思ったが、ロシアは万博に出展していない。「大半の国が参加する『国際博』なのに何か後ろめたいことでもあるのか」と皮肉りたくなった。

 中国館では、月探査機が採取した月の表と裏側の土を見るのに列が伸びていた。アメリカ館ではスペースシャトルの疑似体験が圧巻だったが「世界は力を合わせて一緒に宇宙開発を進めよう」という呼び掛けが気になった。トランプの「アメリカファースト」とのミスマッチを感じた。 最後に「国際赤十字・赤新月運動館」を見た。東日本大震災やガザでの救護活動の映像が流れる。入館者がそれぞれ感想を書き残したメッセージがスクリーンに流されている。   

 「人に優しくいられますように」「人を助けられる大人になりたい」等の言葉があった。大国の力を誇示する展示より、清々しい気持ちになった。万博は10月13日まで続く。

第120話 自らを磨く

以下は広島県環境保険協会から寄稿を依頼され、機関紙一面のコラム「琴線歌」に書いた短いコラム。私が主宰している社会人教養講座「広テレキャンパス」の月1回の講座「ニュースの読み解き方」の模様を綴った。

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「ニュースの読み解き方」という講座を主宰している。社会人が対象、月一回月曜夜の“お勉強会”だ。聴講生の顔ぶれは多彩、年齢層も広い。テーマ案を1週間前にメールで伝え、自分の考えを固めて述べ合う。広島県の人口流出ワーストの問題、宿泊税導入、「安芸と備後」などローカルなテーマや、選択的夫婦別姓、高額療養費問題、死刑制度、アメリカ大統領選、トランプ関税などこちらも幅広い。

インターネット、SNSの出現でメディアが多様化している。私たちは毎日、「情報の洪水」の中で喘いでいる。SNSの「匿名」性は無責任な情報や誹謗、中傷をも生む。「フェイク」を見極めるのは難しい。そこで日々のニュースを多面的に捉え、「真相」の「深層」を「読み解く」のが講座の狙いだ。私は交通整理役に徹し、「結論」への誘導はしない。人それぞれの価値観によって「正解」が違うテーマをなるべく選び、「深掘りして考える」ことを重視している。

 この講座、もう8年。聴講生が「異業種」であり、20代から高齢者まで世代が幅広いので学び合うことは多い。若者の意見に刺激されることもしばしば。

「リスキリング」と言われる。「学び直し」と言えばよいものを、お役人はわざわざ難しく言う。転職やキャリアアップの資格を取るハウツーも大事だが、「自らを磨く」ことも人生を豊かにする。県環境保険協会理事長の兼森さんや前理事長の佐藤さんもこの講座で「自らを磨いて」おられる。

                               広島テレビ顧問、広島大学特別招聘教授     三山 秀昭

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