第122話 大阪万博「フランス館への誘い」
以下は、私が広島日仏協会会長として、協会報に寄稿した大阪万博「フランス館」について視察体験記の再録だ。
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大阪・関西万博に出かけてきました。各国のパビリオンの中には先端テクノロジーを前面に出したり、「力」を誇示する国もあるのですが、ひときわ人気を集めているのがフランス館です。その底流に流れるのは「伝統と文化」です。フランス館のルポをお伝えします。
私が出かけたのは6月19日、在日フランス商工会議所主催の「カクテル・ネットワーキング」という交流会でした。招待を受け、事前登録し、特別なパスをいただいていたので、万博会場に入るのに長い列に並ぶことはありませんでした。また、交流イベントの後、招待者がグループ分けされ、フランス館だけでなく、アメリカ、ドイツ、スイスなどのパビリオンも並ばずに見て回れ、後は自由行動で夜空のドローンショーも満喫できて感謝、感激でした。
「カクテル・ネットワーキング」には全国の日仏協会関係者ら約100人が集まりました。ジェローム・シュシャン商工会議所会頭が挨拶、「フランス館は毎日3万人の見学者があり、各国のパビリオンでは最も早く200万人を達成、人気のパビリオンになっている」と鼻高々でした。
フランス館は万博会場のメインゲートの東入口から入るとすぐに目に入る場所にあります。赤、青、白3色のフランス国旗がたなびき、4階建ての建物そのものがアート作品のようでした。夜は照明に浮かび上がり、近くのアメリカ館が「いかつさ」を感じさせるのに対し、品格のある洒落たデザインの館は「エレガントを追求するフランス」を印象付けています。
テーマは「愛の讃歌」。「お互いが見えない魔法の糸で結ばれている」という「赤い糸の伝説」に因み、「自分への愛」「他者への愛」「自然への愛」をコンセプトにしている、という。それは昨今の「分断」と「対立」へのアンチテーゼなのでしょうか。
フランス館に入るとまず、超有名ブランド企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が企画した展示が並んでいます。言わずと知れた「ルイ・ヴィトン」はあのバッグを始めとする革製品のブランド、「モエ・ヘネシー」はドンペリニオンなどで知られるシャンパーニュやコニャックなど高級酒のブランド。世界的にも有名な二大ブランドが合併した会社です。ルイ・ヴィトンの大型トランク84個が天井まで壁一面に並び、それが鏡に映り、万華鏡のように広がり、「インスタレーション」(空間芸術)となっていたのは圧巻でした。
館内にはあちこちに「考える人」で有名な近代彫刻の父・オーギュスト・ロダンよる作品「手」が置かれています。「手作り」をアピールしており、それは「職人技の手仕事への誇り」であり、「芸術への熱情」でもあるという。「新たなテクノロジーは取り入れるが、伝統を消してはならない」という決意の表明なのでしょう。
続いて「ワインの国フランス」のコーナー。「愛とアルザスワインほど悩みを忘れさせてくれる良い方法はない」というジョゼフ・グラフの言葉が掲示されています。ここではワインは飲めませんがが、交流会でいただいた端麗で洗練されたアルザスワインの香りがのどに残っている感じがしました。アルザス地方はボルドー、ブルゴーニュに続くフランスを代表するワインの銘醸地です。
ワイン通でない私の聞きかじりですが、何でもワインの格付けが始まったのが1855年のパリ万博からだそうです。当時、すでに世界中の美食家にワインは愛飲されていましたたが、「どれが良いワインかよく分からない」との声が多く、ナポレオン3世が「フランスワインを世界にアピールせよ」と命じたそうです。これを受けてボルドーワインを1級から5級に分ける格付けがなされ、ワインがより分かりやすくなり、世界に広まっていったと聞きました。当時、世界の覇権国の「イギリスに負けるな」という思いがあり、「スコッチのイギリス」に対し、「ワインのフランス」の魅力を世界に発信したのです。
先に進むと真っ白いオブジェが現れる。ともに海に浮かぶ宗教施設であり、世界遺産として観光名所になっているモン・サン・ミシェル修道院と宮島・厳島神社の大鳥居が3Dプリンターで再現され、それが“しめ縄”で繋がっているアイデアには微笑みました。広島日仏協会会長として一昨年にモン・サン・ミシェルを訪れ、昨年はお返しの代表団を日仏協会主催の「パリ祭」にお迎えしただけにしばらく思い出に耽りました。宮島のある廿日市市とモン・サン・ミシェル市は友好提携協定を結んでおり、廿日市市への外国人旅行者はフランス人が最多ですが、万博を契機にさらに伸びることを期待したいものです。
次の展示へ歩を進めると、少し大きめだが真っ白なディオールのハンドバックが気品さを醸し出し、やはり純白のドレスやオートクチュール(高級注文服)が400点も展示され、多くの女性の目が吸い寄せられていました。ここでも「手作り」と「ファッションの国フランス」を再認識しました。
出口には大人2人でも抱えきれないほどのオリーブの木が植えられていました。樹齢千年の古木で、万博のためにわざわざ南フランスから運んできたのだという。樹液が出ており、「触るとご利益がある」と言うので、皆さん手でさすっていました。さて、どんな幸せがもたらされるのか・・・。フランス館の一角にはフランス料理やワインが堪能できるレストランや記念グッズお土産コーナーもあり、大変な人気を博しています
なお、日本では「パリ祭」と言われるフランス革命記念日の7月14日にはサンドリン・ムシェ在京都フランス総領事主催の祝賀行事がフランス館で開かれました。フランス政府からはナタリ・ドウトル観光担当大臣が出席、広島からは在広島フランス名誉領事の飯田政之・広島テレビ会長が招待され、出席しました。ドウトル観光相は翌15日に来広、平和記念碑に献花した後、横田副知事ら県の観光担当者らを交え、フランスと広島の観光交流について突っ込んだ意見交換をしました。また、8月8日にはモン・サン・ミシェル市と友好提携関係にある廿日市市主催の観光プロモーションイベントがフランス館で開催されました。松本太郎市長や観光団体関係者らが出席、フランスを始め外国人旅行客や全国から訪れる入館者に廿日市市の「体験、宿泊、食」に関する観光コンテンツをPRし、商談会も行われました。廿日市市が「発祥の地」とされ、近年、ワールドカップが開催されている「けん玉」のアトラクションも人気を集めました。
万博は10月13日まで続きます。フランス館は事前予約がなくても入れますが、人気館なので入館待ちの列ができることが多く、午前の早い時間が比較的空いています。興味のある方は今からでもトライしてみてはいかがでしょう。