第126話 「頑張って」と「頑張ります」の大違い 高市政権の命運 公明が握る?
初代内閣総理大臣の伊藤博文以来140年が経過し、日本にも初の女性総理(第104代)が誕生した。かつてのサッチャー英首相、メルケル独首相、インドのインディラ・ガンジー首相や現在のメローニ伊首相等、女性のトップリーダーは国際的にはさして珍しくはない。国際連合によれば、2025年9月時点で世界には女性の大統領や首相は32人存在する。それでも「初の女性総理」であることや、高市首相の歯切れがよい言葉が響きがよいのか、各種世論調査で内閣支持率は高い。自民党本部は「次期総選挙ではかなりの浮動票も期待でき、参院選で参政党に逃げた保守票も取り戻せる」と意気込む。しかし、地方では自民党の衆院議員は「公明党の連立離脱で支持層が離れれば自分たちの当選はおぼつかない」と不安の声が噴出している。
公明党の斉藤鉄夫代表は自民党との連立離脱の際、「国政選挙では党本部として自民党候補は推薦しないし、わが党候補も自民党から推薦を受けない」と明言した。これを受けてメディア各社は、次期総選挙の小選挙区での自民党候補への影響について試算している。JX通信社によれば、前回総選挙の小選挙区で当選した自民党議員132人のうち、52人が落選するとの衝撃的試算を公表した。この試算は前回総選挙の各小選挙区で自民党候補が獲得した票から、その選挙区での公明党の比例代表獲得票数を機械的に差し引いたものだ。その結果、比例代表獲得議席が前回と同じと仮定した場合、自民党は過半数はおろか比較第一党の座も立憲民主党に奪われるという計算になる。ただ、これは単純な“机上の試算”であり、選挙の実態とは少し乖離している。自公連立以降の総選挙では、公明党が立候補していない小選挙区では「小選挙区は自民党の〇〇へ、比例代表は公明党へ」というバーターの相互協力が常態化しており、公明党の比例代表獲得票の中も自民党支持層から入った票が1割程度とあるとされているからだ。
このため、次期総選挙でも公明党の比例分がそっくり自民党候補から剥がれることにはならない。しかし、共同通信社や読売新聞社が前回総選挙時の出口調査を基に支持政党別の投票行動から試算したところ、自民党はそれでも23~29議席を失う結果が出ており、自民党の小選挙区候補者にとってはやはり“恐怖の試算”ではある。
ここで数量的データではなく、選挙の現場での「支援の熱量」についての実話を紹介しよう。かつて自民、公明両党の推薦を受けて東京都知事選に出馬した石原信雄氏から聞いた話だ。石原氏は竹下登内閣から村山富市内閣まで7代の内閣で官僚組織のトップである「内閣官房副長官(事務)」として支えた後、都知事選に出馬(落選) した。以下は彼の話だ。
「自民党や関連業界団体の激励会で私が挨拶すると、集まった人達は私に決まって『頑張ってください』と言うのです。ところが公明党関係の集会では、私を支援者が取り囲み、口々に『頑張りますから』とおっしゃる。握手一つをとってもその強さが全く違うのです」
「『頑張ってください』は激励の言葉ではあっても頑張るのは候補者の私自身なのです。一方、『頑張ります』は、支援者の皆さんが自ら票集めに汗をかくという決意の表明なのです。熱量がまるで違いました」。自民党系と公明党系の支持者の応援の真剣度の違いを肌で感じたという。
この石原氏の話を何人かの自民党の小選挙区候補者に話し、受け止め方を聞いたことがある。決まって返ってきたのが「全く石原さんのいう通りです。自民党系の集会では一応、顔を出しているだけという空気も感じられ、公明党系とはまるっきり熱気が違うのです」という感想。
公明党は次期総選挙では小選挙区での出馬は絞り込み、比例代表に重心を移す方針だ。ただ、公明党支持者も比例代表の投票のために投票所に足を運ぶ訳で、小選挙区だけを棄権したり、白紙投票するわけではない。公明党は「各地域ごとに人物本位で判断してもらう」(斉藤代表)という。このため、公明支持者の票がそっくり野党の立憲民主党候補等に流れることはないとしても、仮に半分でも自民党候補から離れて他候補に流れれば計算上は「行って来い」でその効果は2倍になり、自民党候補への打撃が大きいことは事実だ。だからこそ連立の組み換えで自民・維新VS野党という中央の永田町での政争とは別に、いま、全国の各地域では自民党候補が公明党と「従前どおりのお付き合いを」と神経を使い、自民党鹿児島県連等は「公明党との関係維持」を確認、党本部に伝えたほどだ。衆院議員の定数削減問題もあり、今後も流動的要素はあるが、「公明党支持者の投票行動が高市早苗政権の命運を握っている」と言っても過言ではないのだ。
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